「元」台湾在住ゲーマーレポート

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【翻訳】台湾デジタルゲーム市場の発展現況と分析

 台湾のゲームニュースサイト巴哈姆特にて、9月7日付の記事で、同日に行われたDigital Taipeiの台湾デジタルゲーム市場についての講演のレポートがありましたので、翻訳しました。

元記事:

台灣數位遊戲市場發展現況與趨勢分析 台灣玩家多偏好歐洲奇幻題材、日系動漫風格遊戲 - 巴哈姆特

 なお、以下の画像は全て当該記事から引用したものであり、全ての権利は巴哈姆特に帰属します。

  経済部工業局主催の台北国際デジタルコンテンツ交流会(Digital Taipei)が本(7)日開催され、以前産業情報研究所(MIC)の産業アナリストであり、現CJS Interacriveパートナーである李易鴻氏が、台湾のデジタルゲーム市場の発展現況と傾向について分析した講演を行いました。

 

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           CJS Interacriveパートナー李易鴻氏

 

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 この講演中、李易鴻氏は資策会と多くの台湾メディアの共作である「2016 台湾ゲーム市場白書」の部分的内容に触れました。「2016 台湾ゲーム市場白書」は市場研究とユーザー研究の角度から出発したものです。

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 調査によると、2015年の台湾ゲーム市場予測は、2015年から2019年までに420億元から530億元に上昇すると見込まれています。市場規模とは、全ての台湾人ユーザーの消費金額の総額を示します。ゲームは、パソコンのオンラインゲーム、パソコンのブラウザゲーム、ゲーム機のゲーム(コンソールとポータブルゲーム機を含む)、スマートフォン型モバイルゲームの4つのプラットフォームに分けられ、パソコンのオフラインゲームとタブレットのゲームは除かれます。

 

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 現在のスマートフォン型モバイルゲームの規模は飛び抜けており、市場の半分以上はスマートフォン型モバイルゲームであり、パソコンのオンラインゲームとパソコンのモバイルゲームを併せて、スマートフォン型モバイルゲームの7割強となります。4年前であれば、パソコンのオンラインゲームが飛び抜けていました。

 台湾の個人が所有するデバイスはデスクトップ型パソコンが最も多く、続いてAndroid携帯、3番目はノート型パソコンであり、家庭用ゲーム機は比較的少ないです。興味深い点は、フィーチャーフォン(スマートフォンではない携帯を指す)の比率も低くはない点です。氏は、一部分には、徴兵に行く男性が持っている可能性がある、と推測しています。

 

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 デスクトップ型パソコンを所有する人が最も多くはありますが、パソコンでのゲームの比率はAndroid携帯より少ないです。氏が興味深いと思うのは、家庭用ゲーム機のWiiは、発売から10年経ち、既に生産が停止しましたが、この半年で少なくとも半分以上の人がWiiで遊んでいる点です。

 

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※説明:(上図)デバイスによるゲームの用途比率は過去3ヶ月から半年で調査したものであり、ゲームをする頻度率ではありません。ノート型パソコンが記載されていないのは、ノート型パソコンでゲームをする比率はとても低く、わずか3割前後だからです。

 

 ゲームのテーマ及び画風の好みの点では、台湾ユーザの大部分はヨーロッパのファンタジーを題材としたもの、日本のアニメ・マンガの画風が好きです。モバイルゲームのトップセールスランキング2~30以上を見てみると、いくつかのゲームはこれらのスタイルであることが見受けられます。日本のモバイルゲームの多くは、「モンスターストライク」、「白猫プロジェクト」のように、ヨーロッパのファンタジーを題材としています。ですが、他にも、例えば、ヨーロッパをテーマとした、写実風の画風である「HIT(ネクソン)」も流行っています。

 

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 台湾のゲームユーザー比率からすると、スマートフォン型モバイルゲームが最も多く、約8割の人がほぼ毎日モバイルゲームをプレイしています。氏いわく「スマートフォンユーザーの8割以上の人はゲームを遊び、またその8割以上の人が毎日プレイしています。」

 

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 一歩進み、ユーザーの習慣を探ってみると、モバイルゲームユーザーは毎日プレイする人が多くはありますが、毎プレイ時間は長くはなく、反対にオンライゲームユーザーは時間が長い人が多いです。氏は「ここには0-15分は記載していませんが、大体15-20%のモバイルゲームユーザーのプレイ時間は15分位内にすぎません。また、『2016 台湾ゲーム市場白書』に2015上半期の資料を掲載していますが、上半期と下半期を比べると、オンラインゲームの一回のプレイ時間は減少しているが、スマートフォン型モバイルゲームの時間は増加している。」と指摘しています。

 

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 ゲームジャンルの好みの点では、MMOゲーム、パソコンのブラウザゲームスマートフォン型モバイルゲームユーザーは皆RPGが好きな人が多く、次にカードゲーム、その次はばらつきがあります。しかし、氏は「RPGということで言えば、現在RPGは非常に多く、そのために比率が高いのではないか、ただこのデータからそれを読み取ることはできない。」と推測します。

 

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 次に、オンラインゲーム、ブラウザゲームスマートフォンの課金ユーザーと無課金ユーザーの各ジャンルの比率比較です。オンラインゲームにおいては、課金ユーザーのゲームジャンルの偏りは特にありません。ブラウザゲームでは、パズルゲームのみ差があり、スマートフォン型ゲームではその差異が多いです。

 

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        オンラインゲームの課金、無課金ユーザーの比較

 

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         ブラウザゲームの課金、無課金ユーザーの比較

 

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    スマートフォン型モバイルゲームの課金、無課金ユーザーの比較

 

 過去半年の課金頻度の点では、オンラインゲームは8割以上のユーザー、ブラウザゲームは約43%のみ、スマートフォン型モバイルゲームは約56%のユーザーが課金をしています。

 

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 また、課金チャネル、国外チャネルについても調査しています。課金チャネルの点では、ユーザーの習慣が見受けられ、当然パブリッシャーとユーザー間の優待サービス等にも影響がある可能性があります。国外課金の経験は台湾ではまだリリースされておらず、直接国外のチャネルに課金したことのある状況でいうと、オンラインゲームユーザーの7割がその経験がり、その他のプラットフォームゲームでは5割に観たないですが、それでもやはり比率としては高く、台湾ユーザーは国外課金の経験が実は多い事が分かります。また、氏は「各プラットフォームのユーザーに過去半年で最も時間を費やしたゲームは何かを聞き、それらをランク付け、ユーザーの属性を整理しました。興味深いのはブラウザゲームのTOP10位以内の、2タイトルが台湾では運営されていないゲームでした。それは、《艦隊コレクション》と《刀剣乱舞》です。」と補足しました。

 

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 ゲームの習慣、ジャンル、スタイル、テーマ等の他に、更にゲーム実況に対しても調査し、各プラットフォームユーザーはゲーム実況を観る習慣があるかどうかが分かりました。家庭用ゲーム機はシーズンの影響を受けやすく、オンランゲームは比較的安定しており、《League of Legends》、《ハースストーン》等の視聴率は最高でした。モバイル、ブラウザゲームは比較的低いです。

 

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 ゲーム実況のプラットフォームの主流はYoutubeとTwitchです。氏は、過去半年の使用経験から、Youtubeの進歩は大きく、クオリティも良いと考えています。ただ、それは何人かの実況者が後からYoutubeを使用し始めたことが、観客にも影響を与えているようです。

 

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 最近話題のVRにも関連調査結果があり、ポータブルデバイスが発売され、VRを体験したことのあるユーザーの比率が増えました。特に、HTC VIVE、Google Carboard、Samsung Gear VR、PlayStation VRは上昇していますが、他のデバイスの上がり幅も高いです。

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 現在、台湾には多くのインディーズデベロッパーがおり、平均チーム人数及び時間は少なく、短いです。これらデベロッパーの大部分の資金は全て自身の貯金をゲーム開発につぎ込んでおり、その他の資金源はとても少ないです。過去一年のインディーズデベロッパーの所得はいくらでしょうか?氏は「多くは25万以下ですが、私は収入が0のデベロッパーがやはり一番多いと考えており、回答を拒絶した比率がとても多いです。私の経験上、基本的に稼げているところこそ回答を拒絶します。」と説明しました。

 

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 講演の終わりに、《Pokemon Go》は一時的なものか、それとも長期的に影響があるのかどうか、台湾ゲーム産業会に影響はあるのか、ARが広まるとどのような状態になるのか、という質問が出ました。

 

 氏は次のように回答しました。「明らかに今日の講演と関係がありません(笑)最近本当によくその質問をされます。まず、《Pokemon Go》は一時的なものかについて。7月から、このゲームは一時的なものだと主張する人がいましたが、9月現在、はやり多くの人が北投に集まっています。未だアップデートを続けており、どんなものが改善されるかも分かりません。《Pokemon Go》は更にこんなにも多くの世代のものを出すことができます。私は、もう一時的なものとは言えません。ランキングは下がるかもしれませんが、それでもやはり10位以上をキープするでしょう。

 

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 《Pokemon Go》が台湾ゲーム市場に影響を与えるか?氏はユーザーの時間配分を分散しているだけだと考えています。其實パブリッシャーが奪い合っているものはユーザーの時間であり、時間こそが全ての人に平等な資源です。特に《Pokemon Go》に時間を費やしながら、いくつかのゲームは閉じても自動進行できますが、《Pokemon Go》はできません。ですので、これはユーザーが他のゲームに費やす時間を減らしており、このような影響はあります。しかし、見方を変えると、この件は全世界に影響があり、とすれば影響がないと言え、この要因は無視することができます。なぜならば皆が同じだからです(影響を受けています)。

 

 ARの点では、「《Pokemon Go》もARと言えますが、広義の話をすると、10年前、ゲームはGPSデータと結びつけARし、カメラではありませんでした。しかし《Pokemon Go》のポイントはARではなく、誰もが知っているIPであり、ゲームと関係なく、台湾の文化創造に関係があることです。台湾は長らく自身のIPがありませんでした。この課題はゲームだけのものではありませんが、なんといってもこの課題はゲーム業界で特に課題となっています。なぜならば、全世界のIP占有率が最低だからです。この課題の対象は台湾全体の創作環境であり、ゲーム業界だけで検討すべきものであありません。